夜明ケ前。外ハマダ暗イ。思イハ未来ヘト焦ル。思イ出ハ過去ヲ膨ラマス。ダケド。ココニハ今シカナイ。今シカナイ。
『フラガール』
2007-10-07 Sun 23:07
hula僕の場合は、観た映画を好きになるかどうかは、どれだけ主人公に感情移入できるか、そのキャラクター自身がどれだけ自分にとって魅力的であるか、という部分が大きく影響している気がする。

そういう意味で蒼井優さんは、演じられる役柄を見ていると性別は違えど"あんな風に生きてみたい"と思わせてくれる不思議な力を持った女優だ。
『花とアリス』(岩井俊二監督)は、綿密に練られたシナリオや演出、主演2人の好演などによりコメディ映画の傑作だと勝手に思っているのだけれど、蒼井優さん演じるアリスの一挙手一投足が僕のツボにハマッて笑いを誘い、飄々(ひょうひょう)とした人物像に惹かれた。
今回も、紀美子(蒼井優)の親友・早苗が北海道に行かなければならなくなった時、「じゃぁ、私もやめる」とそっと優しさを表現できる所や先生に対して直ぐには心を開かなかったり、先生のダンスに憧れ、大切な夢が出来たけれど表にはあまり出さない所など、不器用だけれど内側には深い考えや強い意思が感じられるキャラクターが魅力的で、蒼井さんが演じることで一点の曇りなく透明感を持ってそれが伝わってきた。(歌手のYUIさんにも同じように感じるところがある。)

更に、今回は、もんぺを履いた何処にでも居そうな普通の田舎娘から一転、フラの衣装を身にまとった時に放つ美しさのギャップが凄くて、これぞ女優の成せる業だと感じた。

蒼井優演じる紀美子の周りで、小百合(しずちゃん)のお父さんが亡くなったり、親友・早苗のお父さんが炭鉱会社から解雇され、その家族が北海道に行ってしまったり、色々大きな変化が起こる。そして、いつも一歩後ろで、それらの現実に向き合い静かにそしてひたむきに夢に向かって進もうとする紀美子がいた。
町の人や家族、友達、仲間、先生の想いが実に丁寧に描かれていて、それが自然と踊りを練習する紀美子の背後に見えてくるような演出は見事だと思う。みんなの想いというのがさり気なくストーリーの中に散りばめられているので、こちらは、無意識に、自由にそれらに考えを巡らせることが出来、紀美子がどんな気持ちで夢に生きているのか想像したくなる。

そして、この映画のクライマックスで、それまでみんなの一歩後ろにいた紀美子がステージのセンターに立ち、渾身のダンスを披露することで胸に秘めた熱き想い、そしてみんなの希望を全身で表現するのは圧巻。これまでのどのシーンも全く無駄がなく、すべてこのラストのダンスに繋がっていったのが観ていて気持ちよかった。

ただ、最後のダンスにて集まった観衆が異常に盛り上がり、随所随所に大きな歓声が巻き起こっていたが、これまでフラダンスという文化がなく見たことが無かった昭和40年代の人々が、あんなに心をオープンにして現代のコンサートのように盛り上がるだろうかという疑問が湧いてしまった。すると観衆が盛り上がれば盛り上がるほど、現実味が感じられなく作られたもののような気がしてきて、気持ちが入っていけなくなった。ダンスはとっても良かったけれど予想していたよりは映画の最高潮で感動できなかった・・・。
僕の住んでるのは田舎なのですが、地元の祭りなどに歌手の方が来て歌っても、恥ずかしさや自意識が勝って、気持ちはあるのにどうやって盛り上がっていいのか分からないような空気が全体としてあるので、常磐ハワイアンセンターでは当時、もしかしたらあんな感じだったのかもしれないが僕の中では嘘っぽく見えてしまった。

「情熱大陸」で紹介された映画のラストダンスの一場面を見た時、蒼井優さんのこのシーンにかける並々ならぬ想いが伝わってきて心動かされた身として、その点だけが本当に残念で仕方ない。

全体的な印象として、この映画は本当にバランスの取れた映画だなぁと感じた。

一つに、自分ではどうしようもない厳しく立ちはだかる現実と、自分で切り開いていくことが出来る未来。その両方が入り混じって描かれていていたこと。その中では、登場人物達のささやかな希望や思いやりが一際輝いて、どんな時も失ってはいけない物として浮き上がって見える。奇麗ごとではなく実感としてこの純粋な想いが集まると大きな力となり、何かを変えることが出来るんだと思えた。

二つ目に、紀美子の兄(豊川悦司)が借金取りを追い返すために橋の上で振り上げた"つるはし"の頭が吹っ飛んでいったような良い意味で振り切れた部分と、言葉なくとも心が通うような抑えて見せる部分が良い具合に織り込まれていた気がした。
先生(松雪泰子)が銭湯に行って早苗の親父さんに飛び掛るシーンや、出発しかけた列車を止めるシーンは、視聴者の期待に十分に応えてくれている所だし、先生が列車で去ろうとした時、生徒達が教わったフラのフリで気持ちを伝えようとしたり、娘の踊っている姿を稽古場で初めて目の当たりにした紀美子のお母さん(富司純子)が、黙って持ってきた小包を置いて去っていくシーンなどは、グッと涙を誘う。

このバランスの良さが、見終わった後の爽快感、満足感に繋がったのではないか。

(映画全体を通して特に大きな役割を果たすダンスの先生を演じた松雪泰子さんは、今回改めて凄い実力の持ち主だと納得させられた。松雪さんの演技によってこの作品が何倍もの力を得ている気がした。)

恋愛が全く描かれない映画は珍しいのかもしれないが、これぞ"映画は、総合エンターテイメントだ"ということを体現している作品、という印象を持った。

P.S 映画が始ってからずっと、常磐ハワイアンセンターが、近年経営が行き詰っている地方のテーマパークのように5年くらいで斜陽を向かえていたらショックだなぁと心配していたのですが、映画の最後に、そこは現在もなお健在だというテロップが出てホッとしました。


つまり、この記事で何を伝えたかったかというと蒼井優さんが、WEB「ダ・ヴィンチ」にて連載企画を持っているのだけれど、昨年の夏ごろから更新が途絶えていたのがつい最近再開されたということでした。チャンチャン。

蒼井優・連載企画『TYPEWRITER』

駄文を最後まで読んで頂き有難うございました。
終始涙が溢れ感動したのに、こんな感想しか書けない自分に喝ですよホント・・・。(^^;)

テーマ:日本映画 - ジャンル:映画
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